予防・検診

従業員の歯科受診が仕事のパフォーマンス改善に寄与する可能性を共同研究で確認

従業員の歯科受診で仕事のパフォーマンス改善率が約1.5倍に

ライオン株式会社と株式会社日立製作所は、従業員の歯科受診と仕事のパフォーマンスに関する共同研究の結果を発表しました。この研究では、口腔内の所見およびプレゼンティーズム(※1)が認められ、過去1年間歯科医療機関を受診していなかった従業員のうち、その後1年間に歯科受診をした従業員は、受診しなかった従業員と比べて仕事のパフォーマンス改善率が約1.5倍高いことが確認されました。この結果は、歯科受診が従業員の生産性改善に繋がる可能性を示した知見(※2)とされています。

(※1)プレゼンティーズム:出勤しているにもかかわらず、健康上の問題などで生産性が低下している状態を指します。
(※2)PubMed、医中誌WEBに掲載された原著論文に基づくものです。

歯科受診の有無による仕事のパフォーマンス改善率の比較

研究背景と目的

近年、企業では従業員が不調を抱えながら勤務することで業務効率が下がるプレゼンティーズムへの対応が課題となっています。特に歯や口に関する「おくち不調」は、痛みや口臭への不安などから仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性がある一方で、問題が後回しにされやすく、発見が遅れる傾向があります。企業側もその実態を把握しにくく、知らないうちにパフォーマンス低下や損失が生じている可能性が考えられていました。そこで、職場での健康診断における口腔健康データを用いて、おくち不調とプレゼンティーズムが認められた従業員を1年間追跡調査し、歯科受診と仕事のパフォーマンスとの関係が検証されました。

研究結果の概要

1. 歯科受診をしたグループは仕事のパフォーマンス改善率が約1.5倍に

企業健診で口腔チェックを受け、口腔内の所見とプレゼンティーズムが認められ、過去1年間歯科を受診していなかった従業員を対象に、翌年の企業健診までの1年間に歯科受診をしたグループと受診しなかったグループでプレゼンティーズムの変化が比較されました。その結果、1年以内に歯科受診をしたグループは、受診しなかったグループと比較して、プレゼンティーズム指標(WFun※3)の改善率(14点未満に改善したか※4)が約1.5倍高いことが分かりました。この結果は、歯科受診が仕事のパフォーマンス向上に寄与する可能性を示すものです。

(※3)WFun:経済産業省が推奨するプレゼンティーズム測定法の1つで、7つの質問票から7-35点で労働機能障害の程度を算出します。
(※4)WFun得点の解釈より、14点未満では労働機能に問題がないとされています。

プレゼンティーズム指標の改善率を示す棒グラフ

2. 歯科受診をしなかったグループのパフォーマンス損失は従業員100人あたり約2.6人分に相当する可能性

歯科受診をしなかったグループと比較して、歯科受診をしたグループの方が仕事のパフォーマンスが改善しやすいという結果が得られました。この歯科受診を怠ることによって改善しなかった労働生産性の低下(プレゼンティーズム)は、企業にとって目に見えない大きな損失となる可能性があります。今回の研究では、歯科受診の有無による改善したプレゼンティーズム指標の差をもとに、従業員100人あたりの仕事のパフォーマンス損失割合を推計したところ、約2.6人分に相当することが分かりました。

パフォーマンス損失をイメージするボートのイラスト

3. 「おくち不調はあるのに歯科には行っていない」人が44%存在

口腔チェックの結果、口腔内に所見が認められた従業員の44%が、過去1年間に歯科を受診していないことも明らかになりました。このことから、企業において口腔内に所見があっても歯科受診に繋がっていない人が一定数存在していると考えられます。このような従業員は、適切な受診支援によって仕事のパフォーマンス改善に繋がる可能性があるにもかかわらず、その機会が見過ごされていると推察されました。

歯や歯ぐきに所見があった人の過去1年間での歯科受診歴のグラフ

なお、この研究結果の一部は、2026年6月25日に国際誌(Journal of Occupational and Environmental Medicine)に掲載されました。また、第99回日本産業衛生学会において、産業歯科保健分野への貢献が評価され、「産業歯科保健部会長賞」を受賞しています。

「働く人のおくち白書」をWEB公開

今回の知見を企業の健康経営®(※5)における活用に役立てるため、10年以上にわたる共同研究成果の一部と、企業における歯と口の健康への取り組み方法をまとめた「働く人のおくち白書」がWEB公開されました。

(※5)「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

「働く人のおくち白書」は以下のURLから閲覧できます。
https://www.lion.co.jp/ja/rd/img/development/pdf/workplace_oral_health_white_paper.pdf

今後の展望と専門家のコメント

ライオン株式会社は今後も、研究で得られた知見を活かし、製品・サービス開発を通じて見過ごされがちな「おくち不調」の改善による働きやすさの向上への取り組みを支援していくとしています。

ライオンのオーラルヘルスケアサービス事業『おくちプラスユー』では、企業の健康経営をはじめ、健康保険組合や自治体の事業を支援しています。詳細はこちらをご覧ください。
https://go-lion.jp/Oral-kenkou207

株式会社日立製作所 日立健康管理センタ 主任医長 中川 徹氏のコメント

中川徹氏のポートレート

「産業医として長年、生活習慣病対策や従業員の健康増進に取り組む中で、口腔の健康に注目するようになりました。口腔の問題は、痛みや不快感だけでなく、食事や会話への支障などを通じて、従業員の働きやすさや仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。

今回の研究では、職域で口腔健康評価を受けた後に歯科受診した従業員において、プレゼンティーズムの改善がみられました。この結果は、口腔保健を個人のセルフケアだけでなく、職場における健康支援の一環として捉える意義を示唆しています。産業医の立場からは、企業が従業員の口腔不調に気付き、必要に応じてセルフケアや歯科受診に繋がる環境づくりを進めることが、健康経営において重要になると考えます。」

従業員の健康維持と生産性向上のためには、口腔ケアの重要性が改めて示されました。ご自身の歯や口の健康について気になる点がある場合は、お近くの医療機関や専門家にご相談ください。

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