慢性B型肝炎(CHB)とは
慢性B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)への感染が6か月以上持続することで起こる慢性ウイルス性肝疾患です。ウイルスが十分に排除されないと、持続的なウイルス複製と肝炎が発生します。主な感染経路は、感染血液への曝露、性的接触、出産時の母子感染です。適切に管理されない場合、肝臓の線維化が進行し、肝硬変、肝不全、肝細胞癌へと至る可能性があります。
世界的な疾病負担と現状
米国疾病対策センター(CDC)によると、2022年には世界で約120万人が新たにHBVに感染したと推定されています。慢性B型肝炎と慢性C型肝炎を合わせると、肝疾患および肝癌により年間約130万人が死亡しているとされています。調査会社は、今後も慢性B型肝炎の疾病負担は大きい状態が続くと予測しており、予防、診断、治療体制の強化が重要であるとしています。
世界の慢性B型肝炎患者数は2億5,000万人を超えると推定されており(GSK、2025)、2022年にはHBV感染者のうち約3,410万人が診断されたものの、抗ウイルス治療を受けていたのは約660万人にとどまったとの報告もあります(Fuqiang Cuiら、2026)。これは、診断された患者の中でも相当数が治療に結び付いていないことを示しており、治療ギャップの大きさが重要な問題として認識されています。
地域別・属性別の疫学状況
本レポートでは、2025年を基準年とし、2019年から2025年を過去分析期間、2026年から2035年を予測期間として、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場における慢性B型肝炎の有病率、患者人口構成、将来の発症率・有病率が分析されています。
インドは、最大の患者プールを有し、かつ最も成長が速い地域であるとされています。高リスク集団には、出生時または幼少期に感染した人、免疫機能が低下している人、慢性肝疾患を有する人などが含まれます。主な診断法はHBs抗原検査(B型肝炎ウイルス感染の有無を調べる検査)とHBV DNA定量(体内のB型肝炎ウイルスの量を測定する検査)です。
性別では地域により分布が異なり、英国イングランドでは男性が約3分の2を占める一方(Ruth Simmonsら、2024)、デンマークでは妊婦健診でのスクリーニングが影響し女性が57%を占めたという報告もあります(Statens Serum Institut、2023)。年齢別では、イングランドの患者の68%が50歳未満であり(Ruth Simmonsら、2024)、慢性B型肝炎が成人期に大きな疾病負担を持つことが示されています。民族別では、イングランドの感染者の83%以上がWhite British以外の民族集団に属していると報告されています。
死亡負担も大きく、HBV単独でも2022年に世界で約110万人の死亡に関与したとされており(Fuqiang Cuiら、2026)、慢性HBV感染が世界的な肝疾患死亡の主要因の一つであることが示されています。
各国の概況
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米国: 約85万人~220万人の慢性B型肝炎患者がいると推定されており(American Liver Foundation、2025)、未診断患者の存在が示唆されています。
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ドイツ: 早期診断、疾病モニタリング、長期管理が引き続き重視されています。
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フランス: 一般人口におけるB型肝炎有病率は比較的低いと報告されています(Sandra Bivegeteら、2023)。
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イタリア: 1980年代の約3%から0.6%未満へとHBs抗原保有率が低下しており、ワクチン政策の効果が示されています(Giuseppina Brancaccioら、2023)。
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英国: 約20万6,000人から26万8,767人が慢性B型肝炎を有すると推定されています(UK Security Agency、2024; Ruth Simmonsら、2024)。
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日本: 慢性B型肝炎により年間約4,000人が死亡しているとされており(GSK、2025)、ワクチンや治療が利用可能であるにもかかわらず死亡負担が残っています。
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インド: HBV有病率は0.95%、感染者は約2,900万人と推定され(Ekta Guptaら、2025)、レポートでは最大の患者プールかつ最も成長が速い市場と位置付けられています。
市場・疫学上の課題と今後の機会
現在の市場・疫学上の大きな課題は、疾患認知度や抗ウイルス薬へのアクセスが改善しているにもかかわらず、十分なスクリーニングが行われていないこと、確定診断に必要な分子検査へのアクセスが限られること、そして診断後に治療へ適切につながらないことです。
今後の機会としては、一般人口を対象としたスクリーニング拡大、妊婦・新生児を対象とした母子感染予防の強化、サーベイランス体制の改善、早期診断と抗ウイルス治療へのアクセス拡大が重要とされています。また、機能的治癒を目指す新規治療研究や、より精密なモニタリング技術も今後の成長分野とされています。
治療の目的と標準治療
治療の主な目的は、HBVの増殖を持続的に抑制し、肝炎を軽減し、肝硬変や肝細胞癌などへの進行を防ぐことです。第一選択治療としては、エンテカビルやテノホビルなどの核酸アナログ製剤(ウイルスの増殖を抑える薬)が長期的に使用されます。臨床条件が適する一部の患者では、ペグインターフェロンα(免疫力を高めてウイルスを排除するのを助ける注射薬)が選択肢となることもあります。治療中はHBV DNA量、肝機能、病勢を定期的に確認し、治療反応や病態変化に応じて管理方針を調整することが大切です。
現在の標準治療ではウイルス増殖を強力に抑えることは可能ですが、完全なウイルス排除は容易ではありません。そのため、新たな治療開発では、単なるウイルス抑制だけでなく、宿主免疫によるHBV制御を回復させ、いわゆる「機能的治癒」を達成することが重要な目標となっています。
まとめ
慢性B型肝炎は予防可能であり、治療も可能な疾患であるにもかかわらず、未診断、治療未導入、母子感染、長期的な肝疾患進展という課題が依然として大きく存在します。今後は、スクリーニング拡大、ワクチン接種・母子感染対策、早期治療、継続的なモニタリングを一体化した対策が、疾病負担軽減の鍵となるでしょう。詳しくは医療機関・専門家にご相談ください。
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