予防・検診

若年・中年期の口腔状態が高齢期のオーラルフレイルに影響する新知見:生涯を通じた口腔健康管理の重要性を示す

若年・中年期の口腔状態が高齢期のオーラルフレイルに影響する新知見

サンスターグループと東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長・教授らのグループによる共同研究で、地域在住高齢者の現在のオーラルフレイルと、若年期(15歳時)および中年期(40〜64歳)の主観的な口腔状態との関連が横断的に検証されました。その結果、若年期と中年期の口腔状態の不調がそれぞれオーラルフレイルと関連しており、両時期ともに口腔状態が悪かった場合にオーラルフレイルに該当する可能性が最も高くなることが確認されました。この研究成果は、生涯を通じた口腔健康管理の重要性を示すものです。

オーラルフレイルとは

「オーラルフレイル」とは、健康な口の機能と口の機能低下の間にある状態を指します。歯の喪失や、食べること、話すことといった口腔機能の軽微な衰えが重なり、機能低下のリスクが増加しますが、改善の余地がある状態です。オーラルフレイルは、食事の質や心の健康に影響を与えるだけでなく、要介護状態や死亡のリスクを高めることが報告されており、早期の予防対策が求められています。

研究の背景と目的

これまでの調査では、40代の約1割がオーラルフレイルに該当し、約2割が予備群であるとの結果も示されています。その背景には、若年期からの口腔状態の不調が蓄積されている可能性が考えられています。しかし、若年期から高齢期に至るまでのライフコースを通じた口腔状態とオーラルフレイルの関連を実証した研究はこれまで十分ではありませんでした。本研究は、この関連性を検証することを目的として実施されました。

研究対象者と方法

本研究は、2021年に千葉県柏市在住の65歳以上の健康な高齢者に行った調査のうち、データに不備のない1,596名を対象としました。オーラルフレイルの有無は「OF-5」という指標で評価され、若年期(15歳時)と中年期(40〜64歳)の主観的な口腔状態は自己記入式の質問票で評価されました。これらの関連性は、年齢、性別、BMI、教育年数、認知機能、服薬数を調整した二項ロジスティック回帰分析を用いて解析されました。

研究結果

対象者のうち、オーラルフレイルに該当したのは497名(31.1%)でした。オーラルフレイル該当者では、若年期に口腔状態が悪かったと回答した人が14.5%、中年期に悪かったと回答した人が39.6%となり、オーラルフレイル非該当者よりも過去に口腔状態が悪かったと回答した割合が高い結果となりました。

オーラルフレイル該当者は、過去に口腔状態が悪かった割合が高い

また、若年期と中年期の両時期ともに口腔状態が良好であったグループを基準とした場合、オーラルフレイルに該当するオッズ比は、若年期のみ口腔状態が悪かったグループで2.81倍、中年期のみ悪かったグループで3.45倍に上昇しました。さらに、両時期ともに口腔状態が悪かったグループではオッズ比が4.55倍と最も高い値を示し、他のグループと比較してオーラルフレイルに該当する可能性が高いことが確認されました。

若年期・中年期の口腔状態とオーラルフレイル該当との関連

これらの結果から、若年期からの継続的な口腔健康管理がオーラルフレイル予防に重要である可能性が示唆されました。

研究結果に関するコメント

東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長/未来ビジョン研究センター教授 飯島 勝矢 先生

飯島 勝矢 先生

「オーラルフレイルは『老い』の入り口に位置する重要なサインですが、これまでその予防は高齢期、また高齢期一歩手前からのアプローチが中心でした。今回の研究は、若年期・中年期という人生の早い段階における口腔状態の不調が、数十年後の高齢期のオーラルフレイルと関連していることを示した点で、非常に意義深い知見です。口腔の健康は高齢期だけの問題ではなく、まさに生涯を通じて育んでいくものであることが改めて示されました。今回の研究成果が、若い頃から継続的に口腔の健康に向き合う意識の醸成のきっかけとなり、高齢になっても自分の口で食べ続けられる、健康長寿な人生の一助となることを期待します。」

大阪大学名誉教授 雫石 聰 先生

雫石 聰 先生

「今回の研究結果は、現在議論が進む『国民皆歯科健診』の意義につながるものとして注目に値します。国民皆歯科健診は、年齢を問わずすべての国民が定期的に歯科健診を受けられる体制を整備しようとするものですが、本研究において口腔の健康問題は若年期から蓄積し、高齢期のオーラルフレイルにまでつながることが示されました。歯科健診を通じて若年期・中年期から口腔の問題を早期に発見・介入することができれば、将来的なオーラルフレイルや要介護状態のリスクを低減し、社会保障費の抑制にも貢献できる可能性があります。国民全体が生涯を通じて口腔の健康を維持できる社会の実現に向けて、国民皆歯科健診の早期実現と普及が強く求められます。」

サンスターグループ グローバル研究開発部 歯科衛生士 溝口 奈菜

「今回の研究は、将来のオーラルフレイル予防が高齢期からではなく、若年期・中年期の日々の口腔健康管理から始まる可能性を示しています。毎日の歯みがきや歯間清掃、定期的な歯科受診といった基本的なケアの積み重ねが、将来も自分の口で食べ、話し、笑うための基盤になると考えています。年齢を問わず、今この瞬間からのお口のケアを大切にしていただきたいと思います。」

学会発表情報

本研究成果は、日本老年歯科医学会第37回学術大会(2026年6月12日〜14日、大阪)にて発表されました。

  • タイトル: 若年期・中年期の主観的口腔状態とオーラルフレイルの関連:柏スタディ

  • 発表者: 溝口奈菜¹⁾、永谷美幸¹⁾、田子森順子¹⁾、池田健太郎¹⁾²⁾、前田真理子¹⁾、田中友規²⁾³⁾、飯島勝矢²⁾³⁾

    1. サンスター株式会社
    2. 東京大学高齢社会総合研究機構
    3. 東京大学未来ビジョン研究センター

サンスターグループについて

サンスターグループのビジョン「100年 mouth 100年 health」

サンスターグループは、オーラルケア、健康食品、化粧品などの消費者向け製品・サービスをグローバルに展開する企業グループです。「100年mouth 100年health」を掲げ、人生100年時代において、お口の健康を起点とした全身の健康と豊かな人生の実現を目指しています。毎日の口腔ケアは、お口の健康を守り、全身の健康にもつながると考えられています。一人ひとりが自分らしく輝いた人生を送るためにも、お口のケアを大切にすることが推奨されています。今後も、お口の健康を起点に全身の健康に寄与する情報、サービス、製品を通じて、人々の健康寿命の延伸に貢献していくことを目指しています。

詳細については、サンスターグループの公式サイトをご覧ください。

口腔の健康に関するご心配がある場合は、お近くの医療機関や歯科専門家にご相談ください。

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