予防・検診

健康診断だけでは見落とされがちなリスクに備えるオプション検査の重要性

健康診断の基本項目だけでは不十分な可能性

初夏から夏にかけて健康診断の結果を受け取る時期ですが、「採血もしたから一安心」と考えている方もいるかもしれません。しかし、一般的な会社の定期健康診断や基本健診は、主に「働く上で健康上の問題がないか」を確認することを目的としており、がんの発見を主目的とした項目は限られている場合があります。

血液検査で確認されるのは、主に貧血、肝機能、脂質、血糖値などであり、胃や大腸といった消化器系の詳細なチェックは含まれていないことが一般的です。がんなどの病気を心配している方や、ご家族に病歴がある方は、基本項目に「オプション」を追加して、ご自身の健康リスクを補完していくことが推奨されます。

専門医が推奨する「追加すべきオプション検査」

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院の柏木宏幸院長は、特に以下のオプション検査を推奨しています。

1. 血液検査で手軽にわかる「ピロリ菌検査」

胃がんの主要な原因の一つとされるピロリ菌は、胃カメラ検査をせずとも、健診の採血にオプションとして追加するだけでその有無を確認できます。ピロリ菌は家族間での感染リスクもあるため、過去に一度も検査を受けたことがない方は、検査を検討することが勧められます。

なお、血液によるピロリ菌抗体検査は、除菌後も陽性が続く場合があることや、疑陽性、偽陰性の可能性もあるため、確定診断には他の検査が必要となる場合があります。また、保険診療で除菌治療を受けるには、内視鏡検査による胃炎の確認が必須となります。

2. 1,000円〜2,000円で追加可能な「腎機能・尿酸値(痛風)」

ご家族に腎臓病の既往がある方や、足の親指の付け根の痛みなど痛風の症状が気になる方は、尿酸値や腎機能の詳しい数値を検査することが有用です。比較的リーズナブルな費用で追加できるため、高コストパフォーマンスなオプションと言えるでしょう。

3. 沈黙の臓器を狙い撃つ「腹部超音波(エコー)検査」

お腹にゼリーを塗って機械を当てるだけで行える、痛みがない検査です。この検査は、血液検査だけでは発見が難しい肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓の腫瘍や胆石などを発見するのに役立ちます。特に膵臓がんの家族歴がある方や、飲酒習慣がある方には、受けることを推奨される検査です。

肝臓の数値「ALT」の最新常識

健康診断結果の肝機能項目で、「ALT」という数値に注目することが重要です。2023年に日本肝臓学会は「奈良宣言2023」として、健診でALTが30 U/Lを超えた場合は、かかりつけ医を受診することを提唱しました。これは、基準値内と判断される数値であっても、脂肪肝から肝硬変、さらには肝がんへ進行するリスクを見逃さないための新たな考え方です。

飲酒習慣がない方でも脂肪肝になる可能性があり、糖分の多い飲料の過剰摂取にも注意が必要です。健診で「要精密検査」と判定された場合は、放置せずに消化器内科を受診することが大切です。

「腫瘍マーカー」と内視鏡検査

人間ドックなどでよく行われる「腫瘍マーカー検査」は、がんがあると数値が高くなるイメージがありますが、がんがなくても数値が上昇することや、逆にがんがあっても正常値のままであることも少なくありません。そのため、腫瘍マーカーの結果だけで一喜一憂するのではなく、より確実な検査を検討することが重要です。

柏木院長は、腫瘍マーカーの結果に不安を感じるよりも、胃カメラや大腸カメラといった内視鏡検査で消化器の内部を直接確認する方が確実であると述べています。費用面においても、腫瘍マーカーを複数受ける場合は数千円から数万円かかることがあります。一方、人間ドックでの内視鏡検査は施設によって異なりますが、胃カメラで2万円前後、大腸カメラで2〜3万円程度が目安です。「陰性だから大丈夫」という過信につながりやすい腫瘍マーカーよりも、直接的な内視鏡検査の方が、結果として安心への近道となる可能性が考えられます。

年に1回の健診を「本当の安心」に変えるために

年齢を重ねるにつれて、体には様々な変化が起こります。最低限の基本項目だけでなく、ご自身の年齢やご家族の病歴に合わせた「自分専用のオプション」を追加することが、将来の健康を守る上で大切な鍵となるかもしれません。これらの情報について、ご自身の状況に合わせて医療機関や専門家にご相談ください。

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニックでは、公式YouTubeチャンネルを通じて、医療に関する情報を専門医の視点から分かりやすく発信しています。

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