予防・検診

災害時の目の安全を守る:知っておきたい眼科的注意点と備え

災害時に目が直面するリスクとは?

地震などの災害が発生した直後から避難生活にかけて、目は普段とは異なる過酷な環境に置かれます。主に以下のようなリスクに注意が必要です。

  • 粉塵や異物の混入
    揺れによって建物が損壊したり、家具が倒れたりすると、大量のホコリやガラス片、コンクリートの粉などが舞い上がります。これらが目に入ると、結膜炎や角膜に傷がつく「角膜びらん(黒目の表面に傷がつくこと)」などの原因になることがあります。

  • 衛生環境の悪化による感染症
    断水や避難所生活では、十分な手洗いや洗顔が難しくなることがあります。その状態で目に触れると、細菌性結膜炎などの感染症が急増するリスクが高まります。

  • コンタクトレンズによる重大な眼障害
    水が使えない環境や汚れた手でコンタクトレンズの着脱を行うと、重篤な角膜感染症(角膜潰瘍など)を引き起こす恐れがあります。最悪の場合、視力低下や失明につながる可能性も指摘されており、注意が必要です。

避難時・災害時に「目のことで注意すべきこと」

いざという時、視力を守りトラブルを防ぐための大切なポイントをいくつかご紹介します。

  1. 避難時は「眼鏡」を基本とする
    普段コンタクトレンズを使用している方も、災害時や避難所生活では原則として眼鏡に切り替えることが推奨されます。暗い中での避難や瓦礫の中を移動する際、眼鏡は目を飛来物から守るプロテクターの役割も果たします。コンタクトレンズの継続使用は、衛生面が確保できない状況では非常にリスクが高いことを覚えておきましょう。

  2. 復旧・片付け作業のときは目を保護する
    地震後の自宅の片付けや、泥のかき出し、瓦礫の撤去作業などをするときは、粉塵や砂ぼこりが激しく舞います。コンタクトレンズの装用は避け、可能であれば保護用のゴーグルや、伊達眼鏡、花粉症用の眼鏡などを着用して目を守りましょう。

  3. 目に異物が入ったときのNG行動
    目にゴミやガラス片が入ったとき、焦って目を強くこすってはいけません。角膜(黒目)に傷がついてしまう可能性があります。まずは清潔な水(水道水やペットボトルのきれいな水)で優しく目を洗い流すか、人工涙液の目薬があればそれで洗い流してください。痛みが引かない場合は、無理をせず眼科医の診察を受けましょう。

  4. 目薬の共用は絶対に避ける
    避難所などでは、処方された目薬を家族や知人間で貸し借りしてしまうケースが見受けられることがあります。しかし、目薬の容器の先端がまぶたや睫毛(まつげ)に触れることで、そこから細菌やウイルスが入り込み、感染を広げる原因になることがあります。目薬の共用は絶対に行わないでください。

今日からできる「目の災害対策」

災害の混乱の中でも、慌てずスムーズに行動できるようにするために、日頃からの備えが何よりも大切です。以下のポイントを確認してみましょう。

  • 非常用持ち出し袋に「度数の合った眼鏡」を必ず入れる
    「普段コンタクトだから予備がない」という方は特に注意が必要です。視力に合った眼鏡を防災リュックや枕元に常備しておきましょう。また、老眼鏡が必要な方も、避難先で支援物資の文字や案内を読むために忘れないようにすることが重要です。

  • コンタクトレンズやケア用品の予備・使用期限の確認
    どうしてもコンタクトレンズが必要な状況を想定し、1〜2週間分の使い捨てレンズやケア用品を備蓄しておくと安心です。ただし、防災グッズの中に入れっぱなしにせず、3ヶ月に1度程度は使用期限が切れていないか点検する習慣をつけましょう。

  • 処方箋や眼科カルテ情報の控え
    普段から特殊な処方箋のレンズを使っている方や、緑内障などで毎日欠かせない点眼薬がある方は、お薬手帳を持ち歩くか、スマートフォンの写真フォルダに「使っている目薬の名前」や「眼鏡・コンタクトの度数データ」を保存しておくと、万が一のときに役立つ可能性があります。

根本的な防災として「視力矯正手術(ICLなど)」という選択肢

災害時の目のリスクを考える上で、コンタクトレンズや眼鏡の管理・紛失・破損への不安は尽きません。特に若い方やアクティブな世代の間では、ICL(眼内コンタクトレンズ)手術を受け、あらかじめ「裸眼」の生活を手に入れることが、非常に有効な防災対策の一つとして注目されています。

ICLは、小さな専用のレンズを目の中に移植し、近視や乱視を矯正する治療です。眼鏡や使い捨てコンタクトレンズの在庫を災害用に大量備蓄する必要がなくなるだけでなく、以下のようなメリットが考えられます。

  • 夜間の緊急避難時に、眼鏡を探したりコンタクトを装着したりする手間がない

  • 断水や停電が続く避難所生活でも、衛生リスクを気にせずクリアな視界を確保できる

  • ホコリや破片が飛び交う中でも、レンズのズレや紛失、それに伴う感染症の心配が少ない

「災害時に裸眼で安全に行動できるか」という視点は、防災において見落とされがちですが、命を守る行動を円滑にするために非常に重要です。ライフスタイルやご自身の目の状態に合わせて、こうした視力矯正というアプローチを検討してみるのも、長期的な防災の形の一つと言えるでしょう。詳しくは医療機関・専門家に相談してください。

おわりに

災害はいつ私たちの身に降りかかるか分かりません。だからこそ、「命や体の安全」と同時に、「目の健康・視る機能」を守る準備をしておくことが大切です。「見えにくい」というストレスや、目のトラブルは、避難生活における不安感を増大させる可能性があります。

この機会に、ご自身の防災バッグの中身や、眼鏡・コンタクトレンズの備えを今一度見直してみませんか? 不安なことがありましたら、眼科医や専門家にご相談ください。

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