予防・検診

約4ヶ月のサーキットトレーニングで免疫力向上や全身の血流改善効果の可能性が示唆される – 東北大学とカーブスジャパンの共同研究

研究の背景

日本は超高齢社会を迎えており、健康寿命の延伸が重要な社会課題となっています。加齢に伴い、認知機能だけでなく、免疫機能、血管のしなやかさ、組織の修復能力などが変化します。これまでの研究で、習慣的な運動が健康維持・増進に役立つことは広く知られていますが、運動が体内でどのような変化を引き起こし、全身の健康にどう繋がるかについては、詳細な解析が不足していました。

本研究では、約4ヶ月間のサーキットトレーニングが全身の健康に及ぼす生体メカニズムを明らかにするため、血液中の約1,000種類のタンパク質を網羅的に解析しました。

研究概要

本研究は、精神疾患や脳疾患の既往歴がない41歳以上75歳未満の健常な女性48名を対象としたランダム化比較試験(RCT)で実施されました。ランダム化比較試験とは、医療分野で用いられる、根拠の質が高い研究手法です。

測定項目

  • 脳の認知機能検査

  • 血液中約1,000種類のタンパク質の網羅的解析(最先端のプロテオミクス技術を使用)

介入内容
介入群(認知機能検査23名、血液検査22名)は、週2回以上、1回30分のサーキットトレーニングを約4ヶ月間実施しました。サーキットトレーニングとは、30秒の筋力トレーニングと30秒の有酸素運動を交互に行う健康づくりのトレーニングです。油圧式マシンを用いた筋力トレーニングとステップボード上での有酸素運動を組み合わせ、全身をバランスよく鍛えるプログラムです。

対照群(認知機能検査25名、血液検査22名)は、通常の日常活動を維持しました。

研究結果

サーキットトレーニングを習慣的に行った群において、以下の変化が認められました。

1. 免疫力・炎症制御に関連する変化の可能性

体内の炎症を抑える働きや、免疫細胞の活動に関わると考えられているタンパク質(LRRC25、IL10RA、CD7など)に有意な変化が認められました。これらの結果は、ウイルスや細菌などから体を守る免疫機能の維持・向上を内側から支える可能性を示唆しています。

2. 全身の血流改善効果の可能性

新しい血管を作り、組織への栄養や酸素の供給を増やす働き(血管新生)に関連するタンパク質(PROK1など)に変化が認められました。これは、全身の血流やめぐりの改善、年齢に負けないしなやかな体づくりを血液レベルから支える可能性を示唆しています。

3. 体の回復を助ける可能性

傷ついた細胞や組織を修復する働き(組織修復)に関連するタンパク質(TNFRSF12Aなど)に変化が認められました。これらの結果は、体の回復力や疲労回復のサポートにつながる効果の可能性を示唆しています。

血中タンパク質解析の詳細結果

4. 脳の認知機能の改善

これまでの共同研究に引き続き、サーキットトレーニングの継続により、脳の認知機能(実行機能・記憶機能)の改善が確認されました。実行機能とは、目標に対して思考や行動を制御する脳の高次機能であり、記憶機能は健全な生活を支える上で必要な脳機能です。日常生活においては、例えば、周りの情報に惑わされずに家事や趣味に集中できることや、日々の出来事を正確に記憶し、必要なときに思い出しやすくなることが期待されます。

研究者からのコメント

東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンターの瀧 靖之 教授は、本研究が習慣的なサーキットトレーニングが全身にどのように働くかを血液レベルから捉える重要な手がかりとなると述べています。また、認知機能に加え、免疫・炎症制御、血管新生、組織修復など、全身の健康に関わる血中タンパク質の変化が示されたことは、健康寿命の延伸という社会課題に対し、手軽な運動が健康維持・向上を支える可能性を示した点で意義深いとコメントしています。今後は対象者や研究期間を拡大し、さらなる科学的知見を積み重ねていく方針です。

まとめ

今回の共同研究により、約4ヶ月間の習慣的なサーキットトレーニングが、中高年女性の脳の認知機能を有意に向上させるだけでなく、「免疫・炎症制御」「血管新生」「組織修復」に関連する血中タンパク質に有意な変化をもたらし、免疫力の向上や全身の血流改善効果の可能性が示唆されました。これらの結果は、サーキットトレーニングが年齢を重ねても健康な体を維持するための運動習慣として役立つ可能性を示しています。

運動習慣は健康維持に繋がり得ますが、具体的な効果や健康状態については個人差があります。詳しくは医療機関や専門家にご相談ください。

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