登山・ハイキングにおける皮膚リスクの実態と対策状況
夏山シーズンを迎え、登山やハイキングを楽しむ方が増える一方で、標高の高い場所での紫外線リスクやハチ刺されのリスクに対する認識は十分に浸透していない現状があります。この状況を受け、医療法人社団鉄結会アイシークリニックは、安全な山行のための情報発信を目的に、全国の20〜60代の登山・ハイキング経験者300名を対象にアンケート調査を実施しました。調査期間は2026年7月13日から7月22日までです。
調査結果の概要
約7割が紫外線対策の不足を実感
登山・ハイキング経験者の68.7%が、自身の紫外線対策が不十分だったと回答しました。特に「やや不十分だった」が43.7%と最も多く、標高の高い場所での紫外線リスクに対する認識と実際の対策との間にギャップがあることが示されています。

標高と紫外線の関係を知らない人が約4割
標高が上がると紫外線量が増加するという事実について、「知らなかった」と回答した人が42.3%に上りました。標高が1,000m上昇するごとに紫外線量が約10〜12%増加するという事実は、登山やハイキングにおいて重要な知識です。

約3人に1人がハチ刺されを経験
登山・ハイキング経験者の31.3%がハチに刺された経験があり、ハチに遭遇した経験まで含めると70.0%に達します。夏山ではハチとの遭遇リスクが高いことが改めて確認されました。

ハチ刺され経験者の約4割が適切な対処法を知らず
ハチ刺され経験者のうち、42.3%が正しい応急処置を知らなかったことが判明しました。誤った対処法を行うケースもあり、正しい知識の普及が急務とされています。

今後強化したい皮膚対策は「日焼け止めのこまめな塗り直し」が最多
今後強化したい皮膚対策として、「日焼け止めのこまめな塗り直し」が34.3%で最も多く挙げられました。汗をかく登山中には、日焼け止めが流れやすいため、こまめな塗り直しの重要性が認識されつつあります。
専門用語の解説
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紫外線(UV): 太陽光に含まれる電磁波の一種で、皮膚に影響を与えるUVAとUVBがあります。標高が上がると大気層が薄くなるため、地上に届く紫外線量が増加します。
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ハチ刺傷: スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどに刺されることで生じる外傷です。局所的な痛みや腫れのほか、全身反応としてアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。
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アナフィラキシー: ハチ毒などのアレルゲンに対する急性の全身性アレルギー反応です。皮膚症状、呼吸器症状、循環器症状などが急速に進行し、重篤な場合はショック状態に至る可能性があり、迅速な医療対応が必要です。
ハチ刺され後の症状レベル別対応ガイド
ハチに刺された際の症状レベルに応じた対応は以下の通りです。あくまで一般的な目安であり、個人差があるため、症状が続く場合は医療機関にご相談ください。
| 症状レベル | 主な症状 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 軽度(局所反応) | 刺された部位のみの痛み・赤み・腫れ(直径10cm未満) | 針の除去→流水で洗浄→冷却→市販の虫刺され薬 |
| 中等度(広範囲の局所反応) | 刺された部位周辺に広がる腫れ(直径10cm以上)、48時間以上持続 | 皮膚科を受診(抗ヒスタミン薬・ステロイド外用薬の処方) |
| 重度(全身反応) | 全身の蕁麻疹・呼吸困難・めまい・血圧低下・意識障害 | 直ちに救急車を呼ぶ(アナフィラキシーの可能性) |
| 要注意(複数箇所) | 10箇所以上を同時に刺された | 症状がなくても医療機関を受診 |
| 過去にアレルギー歴あり | 以前に全身症状を経験した方 | エピペン携帯を検討・刺された場合は即座に医療機関へ |
医師からのアドバイス
皮膚科医の髙桑康太医師は、夏山での皮膚トラブルの多くは事前の正しい知識と適切な準備によって予防できると指摘しています。標高が高い場所では紫外線量が増加し、山岳地帯ではハチの生息域と重なるため、両方のリスクへの備えが不可欠です。
登山時の紫外線対策チェックポイント
標高が1,000m上昇するごとに紫外線量は約10〜12%増加するとされています。標高2,000mの山頂では平地より約20〜25%紫外線が強くなり、雪渓や岩場での反射も加わると、想定以上の紫外線曝露となる可能性があります。
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SPF50+・PA++++の日焼け止めを出発前に塗布する
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汗で流れやすいため、2〜3時間ごとの塗り直しを徹底する
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帽子、サングラス、UVカット素材の長袖シャツを併用し、物理的に紫外線を遮断する
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標高が上がるほど対策を強化する意識を持つ
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曇りの日でも紫外線量は晴天時の60〜80%あることを認識する
日本皮膚科学会の紫外線防御に関するガイドラインでは、アウトドア活動時にはSPF30以上の日焼け止めを2〜3時間ごとに塗り直すことが推奨されています。
ハチ刺され対策と応急処置の要点
夏から秋にかけてはスズメバチやアシナガバチの活動が活発化し、特に8〜10月は攻撃性が高まる時期です。
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黒い服装、香水、整髪料などハチを刺激する可能性のあるものを避ける
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ハチを見かけたら、静かにゆっくりとその場を離れる(手で払うと刺激する可能性があります)
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刺された場合は、針が残っていれば爪やカードなどで横に払うように除去し、患部を流水で洗い流してから保冷剤などで冷却する。抗ヒスタミン成分配合の虫刺され薬を塗布することも検討する。(口で毒を吸い出す行為は推奨されません)
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刺された後15〜30分以内に、全身の蕁麻疹、息苦しさ、めまい、動悸、血圧低下などの全身症状が現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があります。この場合は直ちに救急要請が必要です。
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過去にハチに刺されて全身症状を経験した方は、医師と相談の上でエピペン(アドレナリン自己注射薬)の携帯を検討してください。
アナフィラキシーガイドラインでは、ハチ刺されによるアナフィラキシーの既往がある患者に対するエピペン処方の重要性が示されています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 山の紫外線は平地より本当に強いのですか?どのくらい違いますか?
A. はい、標高1,000m上昇ごとに紫外線量は約10〜12%増加します。標高が上がると大気層が薄くなり、紫外線を吸収・散乱する空気の量が減少するため、地上に届く紫外線量が増加します。例えば標高2,000mの山では平地より約20〜25%紫外線が強くなると考えられます。さらに残雪や岩場での反射も加わるため、想定以上の紫外線曝露となることを認識しておく必要があります。
Q2. ハチに刺されたらまず何をすべきですか?
A. 針が残っていれば横に払うように除去し、流水で洗い流してから冷却することが基本です。刺された直後の対処手順は、(1)針が残っている場合は爪やカードなどで横に払うように除去する(ピンセットで摘むと毒嚢を圧迫して毒が押し出される恐れがある)、(2)患部を流水で十分に洗い流す、(3)保冷剤や冷水で冷却する、(4)市販の抗ヒスタミン配合の虫刺され薬を塗布する、という流れです。
Q3. ハチ刺されで腫れがひどいときは病院に行くべきですか?
A. 刺された部位周辺に広がる腫れ(直径10cm以上)や48時間以上持続する腫れがある場合は、皮膚科を受診すべきです。抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬の処方により、症状の軽減と回復の促進が期待できます。特に顔面や首を刺された場合は腫れによる気道への影響も考慮し、早めの受診をお勧めします。
Q4. アナフィラキシーの症状とはどのようなものですか?
A. 全身の蕁麻疹、呼吸困難、めまい、動悸、血圧低下、意識障害などの全身症状が特徴です。アナフィラキシーは刺された後15〜30分以内に急速に進行することが多く、生命に関わる緊急事態です。これらの症状が出現した場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。過去にハチ刺されで全身症状を経験した方は、次回刺された際により重篤な反応が起きる可能性があるため、医師にご相談ください。
Q5. 登山用の日焼け止めはどのようなものを選べばよいですか?
A. SPF50+・PA++++で、汗や水に強いウォータープルーフタイプを選び、2〜3時間ごとに塗り直すことが重要です。標高の高い場所での強い紫外線に対応するため、最高レベルの紫外線防御力を持つ製品を選択してください。登山中は大量の汗をかくため、ウォータープルーフや汗に強いタイプが適しています。顔だけでなく、首の後ろ、耳、手の甲など露出部位すべてに塗布し、2〜3時間ごとに塗り直すことで効果的な紫外線防御が可能です。
放置のリスクと受診の目安
放置のリスク
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山での強い紫外線曝露により、重度の日焼け(水疱形成を伴う2度熱傷)や光老化の促進、将来的な皮膚がんリスクの上昇につながる可能性があります。
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ハチ刺されを放置した場合、局所症状の悪化や二次感染のリスクがあり、アナフィラキシー既往者は生命に関わる重篤な反応を起こす可能性があります。
こんな方はご相談ください|受診の目安
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日焼けで水疱ができた、痛みが強い、広範囲に及ぶ場合
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ハチ刺されで腫れが直径10cm以上に広がった、または48時間以上持続する場合
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ハチ刺され後に全身の蕁麻疹、呼吸困難、めまいなどの全身症状が現れた場合(直ちに救急受診が必要です)
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過去にハチ刺されでアレルギー反応を起こしたことがあり、エピペン処方を相談したい場合
安全な山行のためには、標高に応じた紫外線対策の強化と、ハチ刺されに対する正しい知識・対処法の習得が重要です。ご自身の体調や症状に不安がある場合は、早めに医療機関や専門家にご相談ください。
クリニック案内
アイシークリニックは、皮膚科・形成外科の専門医療機関として、日焼けによる皮膚炎やハチ刺されなどの虫刺症に対応しています(新宿院の一般皮膚科のみでの対応)。首都圏6院(新宿・渋谷・上野・池袋・東京・大宮)で土日祝日も診療しており、Web予約に対応しています。
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