予防・検診

高齢者の健康指標に新たな可能性:血中アルブミン酸化還元バランスとフレイル・プレフレイルの関連

高齢者のフレイル・プレフレイル早期発見に新指標の可能性

高齢化社会において、心身の活力が低下する「フレイル」とその前段階である「プレフレイル」の早期発見と対策は、健康寿命の延伸に不可欠です。これまでの研究では、血中アルブミン濃度が栄養状態の指標として用いられてきましたが、初期の身体機能低下やたんぱく質不足を捉えにくいという課題がありました。

研究の背景と目的

近年、血中アルブミンの酸化還元バランスが、従来のアルブミン濃度よりも早期かつ正確にたんぱく質栄養状態を反映し、身体機能とも関連する可能性が示唆されています。順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科の浅岡大介教授らの研究グループと森永乳業株式会社は、この血中アルブミン酸化還元バランスと、高齢者のたんぱく質摂取量、さらにはプレフレイル・フレイルとの関連性を明らかにするための研究を行いました。

研究方法

この研究は、消化器内科に通院する65歳以上90歳未満の高齢外来患者377名を対象とした横断研究です。対象者に対して、食事調査、血液検査、およびフレイル・プレフレイル評価が実施されました。フレイルの状態は、改定日本版CHS(改定J-CHS)基準に基づき、健常、プレフレイル、フレイルの3群に分類されました。血中たんぱく質栄養指標としては、血中アルブミン酸化還元バランス、アルブミン濃度、総たんぱく質濃度などが測定されました。

主な研究結果

1. 高齢外来患者におけるプレフレイル・フレイルの割合

フレイル分類が可能であった375名のうち、健常は32.8%、プレフレイルは52.5%、フレイルは14.7%に該当しました。

フレイル診断基準と通院患者のフレイル割合

2. たんぱく質摂取量とフレイル重症度、血中栄養指標の関連

たんぱく質摂取量が多い人ほど、フレイルの重症度が低い傾向が見られました。一方で、炭水化物と脂質の摂取量には有意な関連は認められませんでした。

栄養摂取量とフレイルの重症度の関係性

血中栄養指標の中で、血中アルブミン酸化還元バランスのみがたんぱく質摂取量と有意に関連していることが示されました。

たんぱく質摂取量と血中栄養指標の関係性

さらに、血中アルブミン酸化還元バランスは、フレイルだけでなくプレフレイルとも有意に関連しており、早期の栄養状態評価に役立つ可能性が示唆されました。

血中栄養指標とプレフレイル・フレイルの関係性

媒介分析の結果、たんぱく質摂取量とプレフレイル・フレイルとの関連の一部は、血中アルブミン酸化還元バランスを介して説明できる可能性が示されました。

たんぱく質の摂取と血中栄養指標、およびプレフレイル・フレイルの関係性

これらの結果は、血中アルブミン酸化還元バランスが、たんぱく質の栄養状態の指標としてだけでなく、プレフレイルを含むフレイル状態の把握に有用である可能性を示しています。ただし、本研究は一時点のデータを調査した横断研究であるため、たんぱく質摂取量や血中アルブミン酸化還元バランスがプレフレイル・フレイルに及ぼす因果関係については、今後のさらなる検証が必要です。

今後の展望

栄養不足や運動不足は、加齢に伴う身体機能や筋肉量の低下につながり、転倒や要介護のリスクを高めることが懸念されています。血中アルブミン酸化還元バランスは、これらのリスクを早期に捉える新しい指標として、栄養と運動の両面からの健康管理に役立つかもしれません。今後は、この指標を活用した健康状態の評価や、栄養・運動指導への応用が検討されるでしょう。

高齢外来患者の血中アルブミン酸化還元バランスとたんぱく質摂取量およびプレフレイル・フレイルとの関係(イメージ図)

用語解説

  • 血中アルブミン酸化還元バランス: 血中のアルブミンは「酸化型」と「還元型」に分けられ、総アルブミンに占める還元型アルブミンの割合を指します。たんぱく質栄養状態が悪化すると、還元型の割合が減少することが報告されています。

  • フレイル: 加齢に伴い心身の活力が低下し、転倒、入院、要介護、死亡などのリスクが高まった状態です。改定J-CHS基準では、体重減少、筋力低下、歩行速度低下、疲労感、身体活動低下の5項目のうち3項目以上に該当する場合にフレイルと判定されます。

  • プレフレイル: フレイルには至らないものの、その前段階にある状態です。改定J-CHS基準では、上記の5項目のうち1~2項目に該当する場合にプレフレイルと判定されます。

  • 媒介分析: 「原因」と「結果」の間に「中継地点(媒介役)」があるとき、結果に至る影響のうち、どの程度がその媒介役を経由しているのかを調べる統計解析手法です。

原著論文情報

本研究成果は、ヨーロッパ臨床栄養・代謝学会 (European Society for Clinical Nutrition and Metabolism (ESPEN)) が発行するオンラインジャーナル「Clinical Nutrition ESPEN」に2026年7月3日付で公開されました。

  • タイトル: Association of serum albumin redox state with dietary protein intake and frailty in older adults: A cross-sectional study

  • 著者: Takuya Shibasakiほか

  • DOI: https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2026.103436

医療機関・専門家への相談

本記事は研究成果の情報提供を目的としています。ご自身の健康状態や栄養に関するご相談は、必ず医療機関や専門家にご相談ください。

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