AIBTRUST、「J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラム」Foundationalコースに採択
AIBTRUST株式会社は、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が経済産業省の協力のもと実施する「J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラム」のFoundationalコースに採択されました。本プログラムは、AI・医療機器・デジタルヘルス分野で米国市場展開を目指す日本発ヘルスケアスタートアップ15社が採択され、AIBTRUSTはFoundationalコースに採択された10社のうちの1社です。

プログラム概要
「J-StarX」は経済産業省による起業家育成・海外派遣プログラムです。そのうち「US Healthcare Breakthroughプログラム」は、ジェトロおよびMayo Clinic Platformが経済産業省の協力のもと2024年度から実施しており、Mayo Clinic Platform、Mayo Clinic Berg Innovation Exchangeならびに米国のベンチャーキャピタルKicker Venturesと連携し、米国市場での事業開発、実証実験、パートナー探索、商業化を支援するものです。
AIBTRUSTが採択されたFoundationalコースは、地域ごとに異なる規制の理解や知識習得、戦略策定、エビデンス構築などを実践的に後押しし、グローバルに挑戦するヘルスケアスタートアップの創出を目指すコースです。
本プログラムに関するジェトロの発表は以下のリンクから確認できます。
医療AIにおける学習データ汚染のリスク
生成AIの医療分野への実装が進む一方で、学習データに誤情報を混入させる「データポイズニング(学習データ汚染)」が新たなリスクとして指摘されています。医療分野においてAIの出力は診断支援や文書作成など医師の判断に関わる場面で用いられるため、学習に用いるデータの適正性を事前に確認できる仕組みが求められています。
医療分野の大規模言語モデル(LLM)を対象とした研究(Nature Medicine, 2025)では、学習トークン全体の0.001%を汚染させた場合に有害な回答が増加したことが報告されています。この割合は、1,000億トークンのうち100万トークン、記事にしておよそ2,000本に相当します。また、汚染されたモデルが標準的なベンチマーク評価において汚染のないモデルと同等のスコアを示したことも報告されており、通常の性能評価では汚染の有無を判別できない可能性が示されています。
匿名加工情報の課題
医療データをAI開発に利用する際、従来はプライバシー保護のために匿名加工が用いられてきました。しかし、匿名加工はデータの出所が特定できなくなるため、誤りが判明した場合に本人へ照会して訂正することや、汚染されたレコードを特定して除外することが困難になるという課題があります。AI開発に用いる医療データには、プライバシー保護に加えて、出所を証明できることが求められます。

TRUST基盤による医療データの信頼性担保
AIBTRUSTは「医療データが循環する社会」を日本から世界へ広げるというビジョンのもと、医療データの信頼性を担保する「TRUST基盤」を開発しています(特許第7498999号ほか)。この基盤は、カルテ情報を医療機関内に保持したまま、患者本人が保有する鍵によって利用を制御する設計であり、以下の6点を担保します。
- 出所の証明:どの医療機関で、どの医師が診断し、いつ発生した情報かを、データ1件ごとに記録します。
- 本人同意の証明:誰が、どの目的に、いつ同意したかを、検証可能な記録として保持します。
- 改ざん不能な利用ログ:誰がいつ何に利用したかをブロックチェーンに記録します。
- トラストの否定:誤りや同意の撤回が判明した際に、当該データの信頼を取り消し、下流のモデルへ無効化を伝播させます。
- 非匿名化のまま利用:本人同意を前提にメモリ上でのみ利用します。国内完結・3省2ガイドラインに準拠しています。
- FHIR準拠:返却情報を国際標準規格FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)形式へ自動変換します。
特に「トラストの否定」は、学習データ汚染への対処手段として機能し、データの来歴が記録されていることを前提に、誤情報の特定や無効化、患者本人の意思の反映、診断の訂正伝播といった対応を可能にします。

AI監査における判断根拠の追跡
AIの判断根拠を事後に検証するためには、学習および推論に用いられたデータを1件ずつ遡って確認できる必要があります。TRUST基盤は、出所・本人同意・加工・学習・推論利用の5項目について証跡を記録できる設計です。このうち本人同意と推論・利用については、医療機関向けシステム「ヘルスインタビュー」において、同意の記録を改ざんできない形で保全し、AIへの質問と回答をログとして記録しています。
匿名加工情報を用いた場合、出所・本人同意・加工・推論利用の各項目を記録することは困難です。学習に用いたデータの適正性を証明できることが、医療分野におけるAI活用の前提となると考えられています。
米国市場の動向と本プログラムでの取り組み
米国では、患者本人が自らの医療情報にアクセスし、その利用方法を決定できる制度の整備が進んでいます。2016年12月成立の21st Century Cures Act(Cures Act)では、患者が自らの電子医療情報に「特別な努力なく」アクセスできることが国の政策目標とされ、情報ブロッキングが違法とされました。また、2020年5月のCMS-9115-F最終規則により、Patient Access API(FHIR)が義務化されています。
欧州においても、欧州医療データスペース規則が2025年3月26日に発効し、本人のアクセス・訂正・可搬の権利、および二次利用へのオプトアウト権が定められています。
AIBTRUSTは、本人の同意にもとづき来歴を証明できるデータでAIを開発するというアプローチが、規制環境の異なる米国市場においても有効であるとの評価を受け、今回の採択に至ったと認識しています。
AIBTRUSTは本プログラムを通じて、以下の4点に取り組んでまいります。
- 米国の規制・制度の理解:HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act:医療情報のプライバシーとセキュリティに関する米国の法律)、Cures Act、CMS規則(Centers for Medicare & Medicaid Services:米国の医療保険制度を管轄する機関の規則)など、日米で異なる医療データの取扱いを把握し、基盤へ反映します。
- エビデンスの構築:来歴を伴うデータがAIの品質および監査可能性に与える効果を、米国市場で求められる形式で整理します。
- 事業戦略の策定:ターゲット領域、提供価値、パートナーシップ方針を具体化します。
- 現地パートナーとのネットワーク構築:本プログラムを通じて得られる関係機関との対話を通じ、協業機会を探索します。

今後の展開
AIBTRUSTは本プログラムで得た知見を、国内におけるプロダクト開発および導入拡大にも還元していく予定です。国内医療機関での実装を積み上げながら、海外展開に向けた体制整備を並行して進め、患者、医療機関、研究開発の三者に価値が還元される医療データ流通基盤の実現を目指しています。
参考リンク
AIBTRUST株式会社 概要
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代表者:代表取締役 森岡 康一
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設立:令和5年12月
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所在地:〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6番38号 グラングリーン大阪北館 JAMBASE 6階 JAM-DESK