最新医療

日本の診断検査ラボ市場、2035年には278.0億米ドル規模へ拡大予測

高齢化と予防医療の普及が市場成長を牽引

市場成長の主な背景には、日本の高齢化の進展が挙げられます。高齢者人口の増加は、糖尿病、心血管疾患、がん、腎疾患、呼吸器疾患といった慢性疾患を抱える患者数の増加につながり、これに伴い血液検査、病理検査、画像診断、分子診断などの検査需要が拡大すると考えられています。

また、早期発見・早期治療を重視する予防医療の考え方が広まっていることも、市場成長を支える要因です。特に、がん検診を含む政府支援型のスクリーニング施策は、症状が現れる前の段階で異常を発見する機会を増やし、診断検査サービスの利用促進につながっています。

診断ラボの役割変化と技術革新

診断ラボの役割は、従来の検体測定施設から、医療判断を支援する高度な情報基盤へと変化しています。検査結果の精度だけでなく、迅速性、再現性、標準化、データ連携、臨床的な解釈のしやすさが重視される傾向にあります。病院や独立系ラボでは、自動分析装置、デジタル病理、分子診断機器、AI支援ツールなどの導入が進み、ワークフローの効率化と検査品質の向上が図られています。

特に、病理検査分野では、がん診療において腫瘍の種類や性質を正確に特定するための診断が重要であり、分子標的治療や個別化医療の普及により、その重要性はさらに高まっています。2026年3月には、Leica Biosystemsとニチレイバイオサイエンスが東京で協業し、非小細胞肺がん向けのALKコンパニオン診断試薬の開発を進める取り組みを開始するなど、技術革新と連携が進んでいます。

市場を支える多様な提供主体と検査タイプ

市場は、検査提供主体別では病院内診断ラボと独立系診断ラボに、検査タイプ別では病理検査と放射線・画像診断に大別されます。過去の期間では、病院内診断ラボが約46%の市場シェアを占め、病理分野が約52%の市場シェアを占めていました。病院内ラボは、診療との密接な連携が強みであり、独立系ラボは、複数の医療機関からの検体集約による効率化や専門性の集中といった利点があります。

エンドユーザー別では、紹介患者が48%以上の市場シェアを占めており、医師からの紹介や検査依頼を通じて実施される専門的な検査が市場の中心となっています。健康診断や各種スクリーニングなど、患者自身が希望して受ける直接来院型の検査サービスや、企業による健康診断などの法人顧客も重要な成長分野です。

企業提携と研究開発の動向

国内の研究・開発インフラ拡充も市場を押し上げる要因です。2025年9月には、大塚製薬が診断事業部門向けの東京ラボラトリーを開設し、診断機器開発やバイオマーカー研究などを支援しています。バイオマーカー研究は、今後の診断市場において特に重要とされており、特定の遺伝子やタンパク質などを測定し、疾病リスクや治療反応性をより細かく評価する方向へと進むと考えられます。また、2025年10月には、SysmexとQIAGEN K.K.が日本国内で戦略的提携を締結し、分子診断製品の流通強化を図るなど、企業間の戦略的提携も市場機会となっています。

市場拡大の課題と今後の展望

一方で、市場拡大には課題も存在します。規制対応、人材不足、運営コストの上昇などが主な制約要因です。特に、高度な検査技術を適切に運用できる臨床検査技師や病理医などの専門人材の不足は深刻な課題であり、ラボオートメーションの導入による効率化や省人化が求められています。

今後の市場競争では、単に検査件数や価格だけでなく、「どれだけ高度で臨床価値の高い検査を提供できるか」が重要になると考えられます。がんのコンパニオン診断(特定の薬剤が有効な患者を特定するための診断)、遺伝子解析、感染症の迅速診断、希少疾患診断といった高付加価値分野での競争が激化すると予想されます。また、デジタル診断ソリューションの普及により、地域格差の縮小も期待されています。

日本の診断検査ラボ市場は、高齢化や慢性疾患増加による「検査量の拡大」と、分子診断、精密医療、自動化、デジタル病理などによる「検査価値の高度化」の両面から成長すると見込まれています。より早く、より正確に、より効率的に疾病を発見し、その結果を治療選択へ直結させる能力が、診断ラボの価値を決定する中心的な要素になると考えられます。

詳細については、株式会社マーケットリサーチセンターまでお問い合わせください。

関連ノート