最新医療

Ubie、Google Cloud Next Tokyoで生成AIによる病院DXと地域医療DXの展望を語る

生成AIによる医療現場支援の進化

西村氏は、これまでの医療現場のシステムが、AI問診サービスを含め、「問診」や「記録」といった単一タスクの効率化に留まり、タスク間の判断は依然として人が担ってきたという課題を指摘しました。この背景には、患者情報が院内で散在し全体像を把握しにくいこと、業務の流れが現場の暗黙知として存在すること、現場でのシステムカスタマイズが難しいことの3点が挙げられました。

これに対し、生成AIは電子カルテ、部門システム、紙の書類、診察室での会話など、多様な形式の情報を読み取って患者の全体像を把握し、ガイドラインや診療報酬(医療行為に対する対価のルール)といった医療・病院業務の決まりごとを理解する能力を持つようになったと説明されました。これにより、業務全体を先回りして支援する「病院DX伴走」が可能になりつつあるとの見解が示されました。

「ツール導入」から「現場が作るDX」へ

次に西村氏は、これからの医療DXには、単にツールを導入するだけでなく、現場の医療従事者自身がワークフロー(業務手順)を作成し、業務改善のサイクルを回し続ける「現場が作るDX」が不可欠であると説明しました。このアプローチは、権限管理や品質確認といった組織ガバナンスと両輪で進めることが重要とされています。

実際に、「ユビー生成AI」を導入している病院では、1病院あたり平均100以上のワークフローが稼働しており、その多くを現場の医療従事者自身が作成していることが紹介されました。また、患者データの統合から現場の体験までを一貫して設計することの重要性にも触れ、この設計は1社で完結するものではなく、既存のシステムや基盤と連携して初めて成立する、業界全体で取り組むべきテーマであるとの考えが示されました。

病院DX推進の概念図

病院DXから地域医療DXへの展望

講演の最後に、西村氏は地域医療を、生活・発症・治療・回復、そして再び生活へと戻る「ペイシェントジャーニー」(患者の医療体験の全体像)を中心とした業務の積み重ねと捉え直すことができるとし、病院DXの実装において重要となる思想が、地域医療DXの実装にも応用可能であるとの考えを示しました。

そのうえで、地域医療DXにおいても、大規模な仕組みを一斉に導入するのではなく、多職種・各施設がそれぞれの現場でワークフローを自ら作成し、業務をDX化していく進め方を解説しました。この積み重ねにより、施設間の業務にも先回りの支援が広がり、「点」から「線」、そして「面」として地域医療が構成されていくと説明されています。地域内での連携の濃淡を前提に、現場のスピード感や必要度に合わせて連携を強化することで、それぞれの地域の実情に合った地域医療DXが実装できるとの考えが示されました。

そして、「自治体の皆様がこれまで築いてこられた地域医療基盤の上に生成AIを重ねることで、新たな地域医療構想の実装を後押ししたい」と今後の展望を語りました。

地域医療DXの概念図

Ubie株式会社 医療機関事業本部長 西村里穂氏 プロフィール

Ubie株式会社の創業期に初のビジネス職メンバーとして参画し、AI問診や生成AI事業の立ち上げと拡大を牽引してきました。現在は医療機関向け事業本部長として、生成AIと医療の社会実装を推進しています。京都大学大学院卒業後、理学療法士として病院に従事した経験を持ち、「全人的医療の実現を病院の外から支えたい」という思いから、株式会社ディー・エヌ・エーでの事業開発を経てUbie株式会社に現職として就任しています。

Ubie株式会社 医療機関事業本部長 西村里穂氏

Ubie株式会社について

Ubie株式会社は、「テクノロジーで、医療の願いを解き放つ」をミッションに掲げ、2017年5月に医師とエンジニアが創業したヘルステックスタートアップです。AIをコア技術とし、生活者を適切な医療へと案内する「ユビー」や、診療の質向上を支援する医療機関向けサービスなどを開発・提供しています。誰もが自分に合った医療にアクセスできる社会づくりを目指しています。

Ubieが提供する医療機関向けサービスには、問診業務の効率化を支援する「ユビーAI問診」、マルチモーダル・マルチデバイスで利用可能なAIプラットフォーム「ユビー生成AI」、独自のAIによりDPCコーディング業務(診断群分類別包括評価制度に基づく診療報酬の計算業務)の効率化と収益改善を支援する「ユビーDPCサポーター」などがあります。

「ユビーAI問診」は、紙の問診票の代わりにスマートフォンやタブレットを活用することで、医療機関の業務効率化に貢献します。医師は文章に翻訳された問診内容と病名辞書の結果を活用することで、電子カルテ記載に伴う事務作業の負担軽減が期待されます。「ユビー生成AI」は、文章生成・音声認識・画像認識・文章検索(RAG)など複数のAI機能を、電子カルテ端末だけでなくスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で様々な業務に利用できます。これにより、患者と向き合う時間が増え、患者ケアなどの業務に集中できる環境が整うことが期待されます。

2026年6月時点で、「ユビー生成AI」は大学病院を含む135病院以上に導入されており、シリーズ累計で病院・クリニック合わせて全国47都道府県・1,800以上の医療機関に導入されています。これらのサービスは、第三回日本サービス大賞で「厚生労働大臣賞」と「審査員特別賞」を受賞し、2024年12月には「生成AI大賞2024」で特別賞と優秀賞を受賞しました。

Ubie株式会社の提供サービスについて、詳しくはこちらをご覧ください。

※Google Cloud は Google LLC の商標です。

関連ノート