臨床薬理センターの役割と設備
臨床薬理センターは、健常者を対象とした初期臨床試験である第Ⅰ相臨床試験を行う施設です。感染症、アレルギー、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、がんなど、幅広い疾患領域を対象とし、各専門診療科との連携のもと、高度な診断・検査設備が活用できる環境が整備されています。

センター内には、観察室4部屋(ベッド12床)、処置室、検査室、検体保管室が設けられています。被験者が滞在・参加する「治験エリア」と検査設備を導入した「検査エリア」が融合されており、臨床試験で得られたヒト検体の利活用や、基礎研究を実用化するための研究であるトランスレーショナルリサーチの推進、地域社会との連携を担う専門ユニットも併設されています。

コメ型経口ワクチン「ムコライス」の第Ⅰ相臨床試験を開始予定
臨床薬理センターの最初の取り組みとして、千葉大学未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点(cSIMVa)が開発を進めているコメ型経口ワクチン「ムコライス」の第Ⅰ相臨床試験が2026年9月から開始される予定です。
ムコライスは、ワクチンの効果の源となるタンパク質を、千葉大学の植物工場で栽培したイネに作らせ、収穫したお米を医薬品の原薬として利用する新しい技術基盤を特徴としています。このワクチンは、衛生面に不安のある地域におけるコレラによる下痢症や旅行者下痢症の予防に有用であることが期待されています。
また、室温で保存できるため、将来的にはコールドチェーン(低温物流)が不要でワクチンを提供できる可能性があります。さらに、注射を必要としない経口ワクチンのため、注射が苦手な人にも有用であると考えられています。
外来型試験を可能にする施設設計
本センターの大きな特徴の一つは、外来で第Ⅰ相臨床試験を実施できる点です。世界の研究機関では既に外来での実施が主流となっており、日本においても、創薬エコシステムを推進する中で、短期間で効率良く開発を進めることができる外来型の試験が増加しています。
千葉大学病院では、必要に応じて診療科病棟との組み合わせによる入院型試験も実施可能ですが、現在の医薬品開発スキームに合致する外来型が重視されています。このセンターは、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校のAltman Clinical and Translational Research Instituteが持つ研究支援機能をモデルとして設置されました。
本取り組みは、文部科学省と日本学術振興会が推進する「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」の一環として行われます。